2024.01.09 授業
桐杏学園で絵画制作の指導担当をしている坂です。
よくご保護者の方からお子さんの絵が上達するにはどうしたらよいかと相談を受けることがあります。
私は芸大時代の知り合いの子どもが描いた絵を見せてもらう機会があるのですが、その絵の素晴らしさに驚かされることがあります。
血筋なのでしょうか?家庭環境の差なのでしょうか? もちろんそのような家庭には画材は豊富にあるし、画集だってたくさんあるでしょう。
美術館や画廊だって行く機会も多いでしょう。自然に古今東西の美術作品を体験していると思われます。
親が夢中になって創作している姿も間近に見ているかもしれません。
でもちょっと待ってください。
私は5歳から18歳まで北海道の紋別市という小さな田舎町で過ごしました。
美術館なんてありませんし、初めて美術館に行ったのは浪人をするために東京の美術専門の予備校に入学した後のことでした。
両親とも美術とは縁遠い人で絵を描いているところを見たこともありませんし、画材は鉛筆と新聞のチラシの裏紙でした。
家に画集もありませんでした。その代わりに、世界児童文学全集があって、その表紙に印象派のモネ、マネ、ルノワールなどの名画が
採用されていて、それをどうやって描いているのかを貪るように見入っていたことが思い出されます。
いちばん古い絵を描いている記憶は3、4歳頃、テレビで放映されていたアニメ「鉄人28号」を見て記憶して鉛筆で再現して、
翌週、描いた絵とアニメの絵を見比べて自己採点して修正をしていく、ということを夢中になって繰り返していました。
親はその絵を近所に見せ回っていて、それが恥ずかしかったのを覚えています。
絵を描くということは、私にとって一番のお気に入りの遊びでした。
今にして思うと親から絵について批判めいたことを一度も言われたことがなかったのが幸いでした。
今、私の接する子どもたちに好きなキャラクターを描かせようとするとたいてい「難しくて無理!」と言って描こうともしません。
確かに私が子どもの頃と比べてキャラクターが複雑化して難易度も上がっているようですが…。
子どもたちの余暇の過ごし方の変化が大きいのでしょうか?今の子どもたちに遊びの選択肢としてお絵描きがなくなっているようです。
確かに、チャットGPTを使えばイメージ通りの絵を簡単に制作できる世の中になってしまいました。
しかし手を使って何かを作り上げる精神的高揚感は、なにごとにも代え難い人類文化の基本であることは時代が進んでも変わらないでしょう。
受験対策としての絵画の取り組みも大切ですが、長期的視点に立って皆さまのお子さまに創造の喜びを多く経験させてください。
お子さまの作る内容の質を問題にするのではなく、創造に関わる時間の長さや量が大切です。創造を習慣化することを目指せるのが理想的ですね。
それが人間力を鍛えることにも繋がるでしょう。
がんばれ子どもたち!
写真はマネの「笛を吹く少年」です。
子どもの頃よく見ていた名画です。
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